【要約】
「一年に一度だけ魔法が使える。わたしはその日に世界の子どもたちに喜びと思いやりを伝えるんだ」と、白い髭を蓄えたフィンランドのサンタクロースのヨウルプッキは、大いなる使命を語ります。ヨウルプッキは、フィンランドのお耳の山に住んでいます。子どもたちの良い行いや願い事は、お耳の山に降ってくる雪片が運んでくれます。魔法が効くのはクリスマスの一晩だけで、誕生日のお祝いで授かったお守りのオーロラ・ストーンのおかげです。その日以外は、子どもたちへのプレゼント作りや日々の仕事に精をだす普通の人と変わりません。ただ、ヨウルプッキは動物の言葉がわかり、大いなる使命に気づいてからは年もとらなくなりました。
ヨウルプッキの大きな心に導かれるように、お耳の山の家にぞくぞくと仲間たちが集ってきます。いつかは自分も大きなことを成し遂げようと心に決めたコガラや、森で困っている動物たちを助けるカラスに、ヨウルプッキは温かい眼差しを注ぎます。家人に忘れられた家の守り神のトンットゥと呼ばれる赤い三角帽の小人たちを呼んで、クリスマストンットゥとして新たな仕事を与えて、お耳の山の家に住まわせます。増えつづけるトンットゥたちの食事の世話は、自分にできる仕事を求めにお耳の山にやってきた明るいムオリに任せられました。ムオリの魔法の鍋は、一握りの穀物から鍋いっぱいのお粥ができる不思議な鍋でした。
クリスマスプレゼントは、最初はオーロラに乗って配っていました。ヨウルプッキが空飛ぶ魔法のトナカイと出会ってからは、お互いに使命をわかち合うようになります。空飛ぶトナカイは、隣に引っ越してきたサーメ人のサンポ・ラッパライネンが、魔の山に住んでいる魔術師スターロのもとから連れてきた黄金の角と銀色に輝く毛を纏った駿足のトナカイでした。光を奪われたスターロは魔法を使ってトロール隊を結成し、ヨウルプッキとサンポに攻撃をしかけます。トロールを意のままに操るだけではもの足りないスターロは、空飛ぶトナカイが自分のもとに帰って来ない悔しさもあって、ついに呪いの魔法を使います。スターロは、ヨウルプッキのオーロラ・ストーンを奪って、クリスマスを壊そうと企てます。
はたして、クリスマスの神聖は守られるのでしょうか?オーロラ・ストーンの行方はどうなるのでしょう?
物語は、ラップランドの四季を通して語られます。雪解の芽吹く春、青葉と白夜の夏、紅葉とベリーやキノコの収穫の秋、そして、オーロラとクリスマスの冬の情景描写も豊かに綴られています。
史実に基づいた作品を得意とする著者は、フィンランドの北極圏に位置するロヴァニエミに生まれ、現在は、科学技術センター「ヘウレカ」のプログラムマネージャーとして活躍しています。同書は、ハヴァステの初めての児童書です。
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