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Varatohtori Virta pohjoisnavalla    原書名:  Varatohtori Virta Pohjoisnavalla
 (カレント先生代理の極地探検)
 作者名:  Mikko Lensu, 1958~
 ミッコ・レンス
 出版社 / 年:  TEOS / 2005
 ページ数:  133
 ISBN:  9518510598
 分類:  児童小説
 備考:  Varatohtori Virta Etelänavalla

【要約】

オーシャン機構に配属されているカレント先生代理は、砕氷船「ポーラースター号」に乗って、極地探検に出発します。同行するのは、ルールとマジパン好きのプリュカ船長、きっぷのいいロシア人女性の魚調査員ソンヤ、心根のやさしい大男のプラム船員と巨漢ネコのヘルムット、そして、詩吟に興じるAIコンピューターのオスカリに同僚のハンス。

実は、カレント先生代理はハンスとある計画を立てていました。それは、何十年もまえに遭難してしまった、調査船「ストーム号」を探すことでした。このストーム号は、どうやらポーラースター号とは正反対の南極に沈んだらしく、ふたりは「極地キノコ」を使って航路を変えようとします。このキノコを食べると、「南が恋しい病」にかかるからです。解毒剤はキルシュ酒。キノコとお酒で、ポーラースター号は毎晩、お祭り騒ぎとなります。

氷床に降りて、ピザパーティをしたり、火山を調査したり、温泉を発見したり、白熊に遭遇したり。カレント先生代理が発明したザウアークラウトセンサーとは、いったいなんなのでしょうか。そして、ストーム号は、はたして発見されるのでしょうか。

不合理な発明に心温まり、結束してゆく仲間たちの友情とユニークなユーモアに笑みがこぼれる作品です。

【抜粋訳:pp. 85-86】

威嚇射撃で、ぼくたちは白熊の群れを追いはらったけれど、それにもすぐに慣れたらしく、氷でできた調査ハウスに近寄ってきた。熊とぼくらの距離は10メートルしかない。

「麻酔銃は15弾ありますよ。きっと、撃たれた仲間が眠りだせば、ほかの白熊はびっくりしますよ。そのあいだに、ソリに置いてきた無線機を手に入れて、助けを呼べます」

大男プラムが言ったように、選択肢はたくさんあるわけでもなく、でも、白熊へのダメージをできるだけ小さくしてあげたかった。そのとき、思いついたのが「極地キノコ」だった。ぼくがキノコの塊を持ってきたのは、火山にキノコを投げこんで、どういう影響がでるか見てみたかったからだ。氷の調査ハウスから、キノコの入っているリュックを釣りあげて、かけらを取りだした。そして、下に群がっている白熊にむかってほうり投げると、白熊はそのままごくりと飲みこんだ。そのあと、二時間くらい発砲する状況が続いたけれど、キノコがついに効いてきたようで、一頭、また一頭と、白熊はすっくと後ろ足で立ち、ゆっくりとその場を後にしていった。そう、南の方にむかって。

文/訳 末延弘子 ミッコ・レンス著『カレント先生代理の極地探検』(2005)より


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