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Tyypit    原書名:  Tyypit
 (人物いろいろ)
 作者名:  Katja Kallio, 1968~
 カティヤ・カッリオ
 出版社 / 年:  OTAVA / 2004
 ページ数:  137
 ISBN:  9511200518
 分類:  小説
 備考:

【要約】

わたしたちは人生のなかで、さまざまな人と出会ったり、すれ違ったり、親しくなったり、疎遠になったりします。ロシアの文豪ツルゲーネフは人間を「ハムレット」型と「ドン・キホーテ」型に興味深く二類しましたが、出版社での編集者を経て作家へ転身したカティヤ・カッリオは独身女性の視点からさまざまな人物をタイプ別にカリカチュア的に分類しました。

同じように、人物や対象物の詳細な描写に長けた短編小説家ペトリ・タンミネンは、『人生いろいろ(Elämiä)』(1994)で、より簡潔明快にタイプ化しています。

美容師、イタリア人彼氏、隣人、花嫁の母、好きな作家、セラピストといった人たちは、はたしてどう映るのでしょうか。独身女性の鍛えられた洞察力が光る愉快な一冊。

【抜粋訳: pp.76-77】

花嫁の母

妻になる女性と自分はどんな人生を送るのか前もって知りたければ、花嫁の母を訪ねて、徹底的にその本棚をチェックするといい。そうすることで、花嫁がなにから逃げようとしていて、どんな人生をこれから歩んでいくのかわかる。どこから来たのかわからない人間が、どこへ行こうとしているのか知る由もないのだから、これが唯一の手段である。

花嫁の母の本棚と花嫁の本棚を比較してもいい。母親の本棚にオリアナ・ファラチの本ばかりがずらりと並んでいて、花嫁の本棚には白鳥の陶器の置物があった場合、花嫁は明らかに急進的なフェミニズムから解放されようともがき、もっと保守的で控えめな自分を求めようと躍起だ。ところが、つるりと滑らかな白い陶器の白鳥が母親の棚にあり、ファルチが花嫁の棚にある場合は、花嫁はしきたりから逃れようともがき、自分を従順に育てた母親を責めながら、女性の地位を知らしめたいと思っているはずである。

本棚の比較研究は面白いが必要ではない。というのも花嫁の本棚というのは、最終的には無意味であるからだ。一般的に、窮屈な実家から必死になってもがき、母親とは違った人生を歩むと誓ってからも、実家と寸分違わない狭苦しい状況を再構築するために、わが家を建てている。唯一の不可欠な情報源は、花嫁の母の本棚ということになる。つまり、花嫁のそらおそろしい出自がわかれば、自分のそらおそろしい未来も見えてくるというわけだ。

文/訳 末延弘子 カティヤ・カッリオ著『人物いろいろ』(2004)より


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