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Löytöretkeilija Kukka Kaalinen    原書名:  Löytöretkeilijä Kukka Kaalinen
 (探検家ハナ・キャベツ)
 作者名:  Sari Peltoniemi, 1963~
 サリ・ペルトニエミ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2000
 ページ数:  111
 ISBN:  9513119262
 分類:  児童小説
 備考:  Kerppu ja tyttö
 Ainakin tuhat laivaa
 Hirvi

【要約】

落し物たちがどこに預けられるか知っていますか?預けられっぱなしで、持ち主が現れない落し物たちの本音を聞いたことがありますか?

探検家のパパのカブ・キャベツとママのメ・キャベツが、娘のハナ・キャベツに書きおき一枚も残さずに、いつの間にか探検旅行へ旅立ってしまいました。いつものことなのですが、今回はなんの音沙汰もないので、行方不明として捜索願を出すことになります。そして、残されたハナは、落し物事務所の落し物棚で寝泊りすることになりました。

落し物事務所を管理しているのは、なまり気味のポッラリ巡査部長、事務所の所長は初老で顔色の悪いヘルマンニ・カクレンボ、そして金目の落し物を物色しに訪ねてくるのは詐欺師でありながらポッラリの同僚アウクスティ・フィルンキウスです。

捨てられて、落とされて、自分の役目がなくなってしまった落し物たちは饒舌です。そんな彼らのおしゃべりは、ハナの寂しさを倍増させます。あるとき、飼い猫の死を予言するような正夢をみたハナは、心配になって事務所を出て家に帰ることに決めました。ところが、小さな女の子の一人暮らしは頼りないからと、じぃじのチリメン・キャベツが移り住み、ポッラリ警官とカクレンボ所長も転がり込んで、おかしな同居生活が始まります。

ジャージに花柄エプロンを身に纏ったポッラリは家事に精を出し、いかんなく料理の腕前を発揮します。いつも青ざめていたカクレンボは畑仕事に生きがいを見い出し、人が変わったかのように明るくなります。すると、詐欺師フィルンキウスも住みついて、人助けをするなど少しは改心した様子。

そんな初老の男ばかりに囲まれた奇妙な新生活を懸念しているのは、ブリュッセルに住んでいるマイッキおばさんです。悪影響がハナに及ぼしかねないと考えたマイッキおばさんは、ブリュッセルに連れて行こうとします。

さて、ハナの運命は?そして、愛しいパパとママは戻ってくるのでしょうか?

【抜粋訳: pp.34-37】

だれが去って、だれが残ったのでしょう?落し物事務所のスタッフが帰宅したあと、全員の出欠をとることになっています。名前を呼び始めると、倉庫はわーわーぎゃーぎゃーとすさまじい叫び声でいっぱいになります。

「シャンデリア?」

「はい」

「イヤリング?」

「ここよ」

「片方の手袋?」

返事がありません。つまり、片方の手袋は引き取られたのです。

「あいつは、じぶんのモカ色の革の自慢ばかりしていたっけ」と、仕事用の手袋が怒ったように言いました。すさまじい出欠とりは、夜遅くまで続きました。

(・・・)

落し物が引き取られるということはめったにありません。ときどきオークションにかけられるときもありますが、全員が売られるわけではありません。ほとんどが、穏やかな老後を落し物事務所の気楽な棚の上で過ごすのです。カクレンボ所長は、決してモノを見捨てません。ですから、落し物たちはみんな、彼に感謝しています。

(・・・)

落し物に対してあーだこーだ言わない人もいます。ポッラリ警官はその一人です。彼は分けへだてなく、すべてのモノを尊敬しながら優しく接します。警官の古いミニバイクが盗まれたときなどは、袖に黒いリボンをつけて一ヶ月間喪に服しました。ミニバイクを盗んだ泥棒は捕まることはなく、バイク自体もとうとう見つかりませんでした。喪が明けたあとも、イルマと読んでいたバイクのことを熱く語るほどです。

「イルマの乗りごごつは、すんばらしかったー。ガソリンも、食わねかったしなー」

人間や動物とはまた違うけれど、モノだって生きているということが、ハナにはわかっていました。わたしたちより禁欲的に。そういったモノについて、どんなふうに考えるべきなのでしょう?ハナは、「モノ保護」についてノートにこう書きました。

          モノというのは、ポイ捨てされたり、とくにゴミの山に捨てられたりするのを恐れています。
                 モノをポイ捨てしたり、ゴミの山に捨てたりしてはいけません。
                壊れたモノは、高温多湿を避けて、棚のなかなどに保管しましょう。
                 ときには、今でも現役であるかのように接してあげましょう。

文/訳 末延弘子 サリ・ペルトニエミ著『探検家ハナ・キャベツ』(2000)より


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