【要約】
ヘンクセリおばさんは、湖畔の黄色い屋敷に一人で住んでいました。樫や楓の木々に囲まれ、庭には噴水があります。屋敷には部屋が七つもあって、同居人と呼べるのはネズミと噴水に住んでいるフナくらいで、友だちがほしくてなりませんでした。
あるとき、湖を見ていたら赤い帆を立てた白いヨットが現れました。舵を取っていたのは、黒い犬のコルッキでした。ヘンクセリおばさんは、コルッキをミニバイクのドライブに誘いました。途中、隣人のマイッキの家に立ち寄って、ライ麦パンを買い求め、うっかり白い子猫まで連れて帰ってきてしまいました。子猫は道しるべの白い色をしていることからコンパスと名づけられ、コルッキとともにヘンクセリおばさんの黄色い家にしばらくやっかいになることになりました。
湖で泳いでいると、親子三人と出会いました。夏休みに家族で田舎にやって来ていた、グンナルお父さんとヘルッタとマルッタの姉妹です。ヘンクセリおばさんは、さっそくお茶に招待します。シナモンロールにバターの瞳パン、ケーキにサンドイッチ。ヘンクセリおばさんは、にぎやかな食卓が嬉しくて腕をふるったり、お弁当をこしらえて森を案内したりしました。
ある朝、ヘンクセリおばさんの黄色い家のソファテーブルの下で、隣家の牛のキッスルが丸くなっているのにぎょっとしました。どうやらキッスルは自分を猫だと思いこんでいるようでした。何かの感染病が流行っているのかもしれないと思ったヘンクセリおばさんは、朝刊を取りに出かけました。ところが、その途中、鳥のように頭を動かしているブタに出会います。話を聞けば、ブタは自分をツルだと思っていて、村の発明家カレヴィ・カルスタンペラの家に住んでいると言いました。カルスタンペラは成功した試しのない発明家で有名でした。カルスタンペラは「なんにも上手くいかないので旅に出ます!あとはよろしくお願いします」と置き手紙を残して逃げてしまったのです。鶏小屋では羊がコケコッコーと鳴き、松の木ではリスがキツツキのようにドラミングし、道端では蛇のように馬がとぐろを巻こうと悪戦苦闘しています。
ヘンクセリおばさんは動物たちをもとに戻そうとみんなと知恵をしぼります。そして、森に住んでいる仙人の力を借りることにしました。クレープの匂いで仙人を誘い出そうとしたものの効果はなく、どんどん森の奥深くへわけ入って、コンパスのおかげで仙人に会うことができました。事情を知った仙人は、森を出てみんなと一緒に村へ向かいました。森から持ってきたモミの若芽、オオバコの葉、セイヨウノコギリソウ、アンズタケを煎じて抽出した特効薬を動物たちに与えると、みるみるうちに動物たちはもとの自然な姿に戻りました。
夏休みも終わりに近づいた日、仙人は森へ、グンナル一家は町へ帰ることになりました。お別れパーティは盛大にしました。
休みのたびに戻ってくる、とグンナル一家は言ってくれたけれど、ヘンクセリおばさんは寂しくなりました。コルッキも海に戻るつもりでしたが、煙突から立ちのぼる煙を見て、「どうやら陸酔いしたらしい」とつぶやき、コンパスとともにしばらく残ることに決めました。
著者のヘイディ・コンガスは、文学作品のテレビドラマのプロデューサーや小説家として活躍し、本書で児童作家デビューをしました。風変わりな登場人物たちが、愉快な出来事を繰り広げる夏のキラキラした友情物語です。
|