【抜粋訳】
ホオジロはトナカイの懐からはい出ると、トナカイの角にさっと飛びのりました。翼を広げたホオジロは、仲間の群れが飛びさってしまったことに気づいてあわてました。空高く舞いあがって、ぐるりと見わたしてみたものの、空を飛んでいる鳥は一羽もいません。しかし、ホオジロはトナカイを見て、もっとあわてました。
「ねえ、どうして動かないの?はやく起きあがって!」ホオジロは、おろおろしながらトナカイに言いました。
「起きあがれるものならそうしたい。さあ、雪と氷が来るまえに、きみは友だちといっしょにお逃げ」
トナカイの言葉に、ホオジロの胸はいたみました。元気のないトナカイをかわいそうに思ったのです。ホオジロはトナカイの鼻にちょこんと飛び乗って、お母さんが歌ってくれた歌をうたいました。
ひとりぼっちの夜は
寒さに凍えてしまいます
でもふたり寄り添いあえば
寒さは愛をおしえてくれます
ホオジロは歌い終えると、トナカイの耳のなかにもぐりこんで、丸くなって眠りに落ちました。
|