【要約】
あるところに、青い雪の降る村がありました。太陽は彼方から昇って沈んでゆくのに、その村まで光が届きません。雪がとけない村の子どもたちは、ふしぎなことに年を取りませんでした。
そもそも青い雪が降りはじめたのは、村の少年レイダーの父親が行方不明になってからでした。レイダーの父親は、光る石が採れる井戸を守っていた森の番人でした。森の番人の失踪とともに青い馬が現れて、村の入り口で番をするようになりました。
ところが、青い馬がうたた寝しているときだけ日が射して、子どもたちは雪の城や雪だるまをつくって遊びました。光をうけた雪面は青から金色に輝き、氷の張った泉はとけて小動物たちの喉を潤しました。
鳥やウサギが巣を作る森へ行ってみたい。白い雪が春とともにとけて鳥が歌う村に行きたい。太陽を浴びて大きくなりたい。そんなふうに子どもたちは願うようになります。村の少女で、金色の髪のマルヤは、森の番人がまだ生きているかもしれないと思って、レイダーと捜しに森へ出かけます。
村の子どもたちが歌を歌うと、入り口で見張っていた青い馬はうとうとしはじめました。その隙に、マルヤとレイダーは村から逃げだします。どこからともなく、静かなやさしいフルートの音色が流れてきました。二人はフルートに導かれながら、月明かりに照らされた道を進んで、井戸のある森の奥へ入っていきました。
そこには、黄金色の服をまとってフルートを持った少年が立っていました。フルート少年は、光る石にまつわる話を語りはじめました。その昔、ここで光る石が採れることを知った人間が、森の番人の注意を聞かずに山をすっかり削ってしまったあげく、森の番人を閉じこめてしまったのです。そのときに、山の洞窟にいた青い馬が中から逃げだしたのでした。森の番人は、地下水を飲んだり、鳥が運んでくれるベリーや果物を食べたりして、生き延びていました。
森の番人が村にもどってくると、太陽が顔を出し、雪がとけ、青い馬は消え去りました。鳥が歌い、花が咲き、泉が湧きました。泉の水を飲んだ子どもたちは、みるみるうちに大きく成長しました。それ以来、雪は冬に降って春にとけ、子どもたちは大きくなりました。そして、村は「ヒナギクの村」という昔の名前を取りもどしました。
レーナ・ラウラヤイネンは、国語教師から作家へ転身し、伝説や神話を題材にした物語を多く書いています。同書は、フィンランディア・ジュニア賞を受賞しました。
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