【要約】
元気で愛くるしいリスのノコは、ヒーリヴオリ村の大きなカエデの木の家に住んでいます。カエデの木の家は昔からあって、ノコが住む前にも、たくさんの住人が出入りしていました。家もずいぶん古くなりました。夏も終わりに近づいた八月、ノコは兄のヴィリから台所の天井を塗り替えるように言われます。いっしょに住んでいるおっとりマイペースのトイヴォと、ペンキ塗りのアルバイトにやって来たちょっぴりこわがりなネズミのイーリスと、台所の大掃除からはじめました。
カエデの木の家のいちばんの自慢はレンガ造りのストーブです。冬に火を入れると、家中が暖まります。ただし、ストーブの扉は開けないようにとヴィリから言われているので、掃除もできません。ヴィリはとにかく指図ばかりして、ノコは不満でした。どうしても気になった三人は、ストーブの扉を開けてみることにしました。そこには、ヴィリの書類やヒーリヴオリ村の地図が隠されていて、煙突にはほら穴がありました。ほら穴や地図を見つけたことは三人だけの秘密にしておこうと誓いをたて、ノコたちは秘密結社「カエデ騎士団」を立ち上げます。
騎士団を立ち上げたその日の晩、ヴィリはカエデの木の家にあやしいモグラ連中を呼びました。モグラ連中は、どうやらヒーリヴオリに伝わる宝の王冠を盗もうとたくらんでいるらしく、ヴィリも一枚かんでいました。王冠のありかはドブネズミ大屋敷の見取り図に記されていて、ヴィリは宝の地図を手に入れるために、ヘンクツ者で有名なドブネズミ主人に話をつけにいくことになりました。
村に伝わるヒーリヴオリ伝説とは、昔、ヒーリヴオリを統治していた王さまが、村の平和のために自らの王冠を月の精に捧げたことにはじまります。月の精は、百年に三晩、ヒーリヴオリの湖の水が黒くなる夜に目ざめます。月の精はどんな願いもかなえてくれるのですが、そのためには、自分のたいせつなものをあきらめなくてはなりません。月の精に捧げた王冠が発見されると、村が不幸になると言われています。ドブネズミ主人は、そのことを知っていたので、かたくななまでに見取り図を守りぬいてきたのでした。
王冠のありかを示す地図はカエデのかたちをしていました。つまり、カエデの木の家の下が王冠のありかだったのでした。ノコとトイヴォとイーリスのカエデ騎士団は、盗賊団がカエデの木を切り倒そうとするのを、なんとかして阻止します。ノコがヴィリを説得している間、トイヴォはモグラ盗賊団につかまって納屋に閉じこめられ、イーリスは盗賊団に追われて森で迷ってしまいます。そのとき、イーリスは月の精の声を聞きました。
「おまえが手放したくないものを差しだしなさい。そうすれば、願いをかなえよう」
イーリスは考えたあげく、自分のしっぽを差しだしました。ペンキ塗りのバイト代でリボンを買って、自慢のしっぽにつけたいと思っていたけれど、カエデの木のために月の精にゆずったのです。すると、モグラ盗賊団は姿を消し、さっきまで黒く濁っていたヒーリヴオリの湖もきれいな水色になりました。兄のヴィリも反省したようで、なまいきな態度をあらためることをノコに約束しました。ノコとトイヴォとイーリスのカエデ騎士団には、王冠を守ってくれたお礼としてドブネズミ主人から川船がプレゼントされました。
『カエデ騎士団と月の精』は、挿絵画家として活躍中のリーッカ・ヤンッティ自身の処女作で、現在までに「カエデの木の家のなかまたち」シリーズとして、第二弾『カエデの木の家のなかまたちときけんな足あと(Vaahteratuvan väki ja vaarallinen pero)』、第三弾『カエデの木の家のなかまたちとこわいクモ(Toivo ja hirveä hämähäkki)』が刊行されています。
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