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Ilvekset kuin veljekset    原書名:  Ilvekset kuin veljekset
 (ふたごのオット)
 作者名:  Petra Heikkilä, 1976~
 ペトラ・ヘイッキラ
 出版社 / 年:  Lasten Keskus / 2004
 ページ数:  38
 ISBN:  9516274889
 分類:  絵本
 備考:  

【要約】

オットは、テンテン模様が大好きな北国うまれのオオヤマネコです。今は、常夏のテンテン森に住んでいて、ヒョウの両親のもとで暮らしています。お父さんのレオ・バルドとお母さんのサルサ・バルドはどちらも詩人で、日がな一日、木のうえで過ごして詩を書いています。

ある日、オットは、自分とおなじ模様の兄弟がほしくて、「ぼくにうりふたつの兄弟がほしい!」とお願いしました。

レオとサルサには、子どもができませんでした。でも、二人はお父さんとお母さんになりたくて、オットを養子縁組しました。孤児院にいたオットはサギのタクシーに乗って、レオとサルサのもとへ運ばれてきました。ほんとうのお母さんのミルクではないけれど、愛情たっぷりのココナッツミルクで、オットは育ちました。

オットは北国うまれなので、日に当たりすぎると赤いじんましんができます。赤いテンテンが治るまで、昼のあいだは洞窟で過ごすことになりました。オットのじんましんが治るように、オットの悩みを解決してくれるように、お母さんのサルサはヒマワリの種をまきました。この種は、オットを運んできたサギがくれたものでした。

洞窟のなかでは、いろんなネコ科たちがバレエのレッスンをしていました。恥ずかしがりやのオットはこっそり様子を見ていました。

みんなが帰ったあと、オットはひとりぼっちになりました。ところが、自分とそっくりなオオヤマネコがいることに気づいて、オットはうれしくなります。つぎの日も、オットはふたごの兄弟に会いたくてうきうきしながら洞窟に行きました。しかし、ふたごの兄弟はオットの動きのまねばかりして、オットはつまらないと感じるようになりました。パイナップルを食べに遊びに来るように誘っても、もうひとりのオットは洞窟から出てきてくれませんでした。

訪ねてきてくれたのは、オットとは模様のちがう三人のバレエレッスン生でした。クロヒョウのパレ、ライオンのレッティ、トラのタレの三人は、オットが洞窟に置き忘れた片方のバレエシューズを届けに来てくれたのです。オットは三人と洞窟に出かけて、あたらしい友だちを紹介しました。しかし、それは鏡に映ったじぶんだったということに気がついて、オットはがっくり肩を落とします。鏡像とは握手もできなければ、抱きつくこともできませんから。

でも、パレやレッティやタレとは手も握れるし遊ぶこともできます。三人の模様は自分とはちがうけれど、とってもすてきで、オットは仲よしになります。オットの赤いじんましんもだんだん薄くなり、花を咲かせたヒマワリを日よけ帽子にして、三人と外で遊ぶようになりました。

【抜粋訳】

 オットが明かりをつけたとたん、洞窟のなかからやさしい衣ずれの音がしました。オットはさっとかくれました。洞窟のなかにバレエのレッスン生がささっと入ってきたのです。オットに気づく子はだれもいません。そのうち、バレエのレッスンがはじまりました。
 レッスンが終わると、オットはまたひとりぼっちになりました。オットもバレエのステップをふんでみたくなりました。足をすっと伸ばしたり、ジャンプしたり、くるっと回転したり、目をとじて体をゆらしたりしました。
 オットが目を開けると、そこにオットとそっくりのオオヤマネコがいました。オットが手をふると、もうひとりも手をふりました。オットがにっこり笑うと、もうひとりもにっこり笑いました。オットについにふたごの兄弟ができたのです!
 日が暮れて、オットは家にかえりました。お父さんのレオとお母さんのサルサは、オットのふたごの兄弟のことを聞いて、びっくりしました。
「おかしなこともあるものね、
 きっとぐうぜんね、
 うりふたつのオットなんて
 もうひとりのオットなんて」
 オットはふたごの兄弟ができてうれしくてたまらず、家にかえってからもバレエをおどっていました。ただひとつ、かなしかったのは、オットといっしょに家にかえってきてくれなかったことでした。
 つぎの日の朝、オットはうきうきしながら洞窟に行きました。
 ふたごの兄弟は洞窟でオットを待っていました。ふたりはまた、一日中いっしょにバレエをおどりました。オットはいろいろなジャンプや回転をしました。すると、ふたごの兄弟もおなじようにまねしました。オットは、じぶんのまねばかりする兄弟がいやになってきました。
 お母さんのサルサは、家にかえってきたオットをよろこばせようと、フリルのついたえりとバレエシューズを縫ってくれていました。オットはとてもうれしくなりました。つぎの日の朝、洞窟へ走っていくオットに、サルサはこう呼びかけました。
「もうひとりのオットによろしくね、
 おいしいパイナップルをごちそうするわ
 うちの庭の木のうえで!」
 オットははっと息をのみました。ふたごの兄弟もフリルのついたえりをつけ、バレエシューズをはいていたからです。もうひとりのオットはオットをみはっていたのでしょうか?じぶんで考えだしたりしないのでしょうか?オットはますますいやになってきました。
 かえりぎわ、オットはお母さんの言葉を思いだして、くるりとふりかえりました。オットは気をとりなおして大きな声で言いました。
「パイナップルを食べにおいでよ!おいしいよ!」
「いーよ、いーよ、いーよ!」
 オットは返事を聞いて、うれしくなりました。

文/訳 末延弘子 ペトラ・ヘイッキラ著『ふたごのオット』(2004)より


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