【要約】
十一歳の少女エミリアは、老人ホームで看護士をしている母親とヘルシンキで二人暮らしです。いつも一人ぼっちで留守番をしているエミリアに、母親はモルモットを買ってきてくれました。ちっちゃなモルモットに大きくて強い名前をつけようと、憧れのフィンランドのハロネン大統領にちなんで、モルモットにハロネンという名前をつけました。指を噛まれたある日の晩、エミリアはいっぷう変わった夢を見ます。夢の中に、ティアラを戴いたダイアナ妃ふうのジャイアント・モルモットが現れて、こう告げました。
「エミリア・ライティネン=ニエミネン、あなたは選ばれました」
「えらばれたって、なにに?」
「スーパーモルモットに。モルモットが指をかんだのは、あなたをスーパーモルモットに選んだからですよ」
スーパーモルモットが選ばれるのは百年に一度のこと。モルモット用の水を飲むと、手は前足になり、体はずんぐりし、顔は毛むくじゃらになり、前歯もにょきっと伸びて、超能力をもつスーパーモルモットに変身します。ただし、エネルギーは制限つきで、超能力は善いことために役立てて、暴力はふるってはいけません。
エミリアの通う小学校は、EUの文化支援を受けており、校長先生はことあるごとに数学大会や学芸会を開いて生徒を競わせます。凝りもせず、今度はクリスマスにジョーク大会を開催するとのこと。審査員は文化大臣です。不安でしかたないのは、クラスの秀才でエミリアの友だちのシモです。シモは父親と二人暮らしでした。運動が大の苦手で、競争が嫌いです。しかし、人並みはずれた聴覚の持ち主です。数学大会で優勝するほど賢いシモを、クラスの不良グループのリーダー、マーガリン・アンテロは苛めていました。アンテロは不潔なうえに行儀も悪く、町のマーガリン工場の社長をしている父親が、学校に献金しているため、先生たちはアンテロに注意ができません。なんとかして、ジョーク大会でシモを勝たせてあげたくて、エミリアはジャイアント・モルモットから飛ぶ薬を飲んで、スーパーモルモットに変身して、ジョークの教祖がいるというインドへ飛びます。世界でいちばんおもしろいジョークは、ボタンが弾けとんで、髪が逆立つくらい、とびきりおかしなジョークでした。
笑いの力は強大で、シモは文句なしに優勝しました。優勝賞金で、シモはクリスマスパーティを家で開き、先生やクラスメートを招きました。もちろん、マーガリン・アンテロも。いたるところにスーパーパワーを発揮できるチャンスがあって、「生きていればできないことはない」のです。
作者のパウラ・ノロネンは、長年ラジオのパーソナリティとして活躍し、処女作である同書は、フィンランディア・ジュニア賞の候補に選ばれました。
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