KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

 

 tunnus おすすめ作品

Emilian päiväkirja Supermarsu lentää Intiaan    原書名:  Emilian päiväkirja Supermarsu lentää Intiaan
 (エミリアの日記 スーパーモルモット、インドへ飛ぶ)
 作者名:  Paula Noronen, 1974~
 パウラ・ノロネン
 出版社 / 年:  Gummerus / 2008
 ページ数:  157
 ISBN:  9789512074310
 分類:  児童書
 備考:  

【要約】

十一歳の少女エミリアは、老人ホームで看護士をしている母親とヘルシンキで二人暮らしです。いつも一人ぼっちで留守番をしているエミリアに、母親はモルモットを買ってきてくれました。ちっちゃなモルモットに大きくて強い名前をつけようと、憧れのフィンランドのハロネン大統領にちなんで、モルモットにハロネンという名前をつけました。指を噛まれたある日の晩、エミリアはいっぷう変わった夢を見ます。夢の中に、ティアラを戴いたダイアナ妃ふうのジャイアント・モルモットが現れて、こう告げました。

「エミリア・ライティネン=ニエミネン、あなたは選ばれました」
「えらばれたって、なにに?」
「スーパーモルモットに。モルモットが指をかんだのは、あなたをスーパーモルモットに選んだからですよ」

スーパーモルモットが選ばれるのは百年に一度のこと。モルモット用の水を飲むと、手は前足になり、体はずんぐりし、顔は毛むくじゃらになり、前歯もにょきっと伸びて、超能力をもつスーパーモルモットに変身します。ただし、エネルギーは制限つきで、超能力は善いことために役立てて、暴力はふるってはいけません。

エミリアの通う小学校は、EUの文化支援を受けており、校長先生はことあるごとに数学大会や学芸会を開いて生徒を競わせます。凝りもせず、今度はクリスマスにジョーク大会を開催するとのこと。審査員は文化大臣です。不安でしかたないのは、クラスの秀才でエミリアの友だちのシモです。シモは父親と二人暮らしでした。運動が大の苦手で、競争が嫌いです。しかし、人並みはずれた聴覚の持ち主です。数学大会で優勝するほど賢いシモを、クラスの不良グループのリーダー、マーガリン・アンテロは苛めていました。アンテロは不潔なうえに行儀も悪く、町のマーガリン工場の社長をしている父親が、学校に献金しているため、先生たちはアンテロに注意ができません。なんとかして、ジョーク大会でシモを勝たせてあげたくて、エミリアはジャイアント・モルモットから飛ぶ薬を飲んで、スーパーモルモットに変身して、ジョークの教祖がいるというインドへ飛びます。世界でいちばんおもしろいジョークは、ボタンが弾けとんで、髪が逆立つくらい、とびきりおかしなジョークでした。

笑いの力は強大で、シモは文句なしに優勝しました。優勝賞金で、シモはクリスマスパーティを家で開き、先生やクラスメートを招きました。もちろん、マーガリン・アンテロも。いたるところにスーパーパワーを発揮できるチャンスがあって、「生きていればできないことはない」のです。

作者のパウラ・ノロネンは、長年ラジオのパーソナリティとして活躍し、処女作である同書は、フィンランディア・ジュニア賞の候補に選ばれました。

【抜粋訳: pp. 131-133】

ジョークの教祖が住んでいる洞窟のまえには、すごい行列ができていた。真上から日はかんかんに照りつけて、肩がほてって赤くなってきた。日焼けどめは家に忘れてきちゃった。並んで待っているひとにパンフレットが配られた。パンフレットには、ジョークの教祖のむかしの仕事や教祖になるまでのお話がのっていた。

(・・・)  並びはじめてもう二時間。くたびれてねむたくなってきた。いきなり、教祖が目のまえにあらわれて、わたしの肩がまっかに焼けているのを見て先にとおしてくれた。あたまのいい人だ。わたしは誰で、ここにやって来た理由をたずねられたので、自己紹介した。

「わたしはフィンランドから来たエミリアです」
「それで、なにを知りたい?」
「世界一のジョークです」
「ほう」
「そのためにインドまで飛んできました。知っていますか?」
「わたしには知らないものはない」
「教えてください」
「なぜ知りたい?」
「学校でジョーク大会があって、シモに勝たせてあげたいからです。シモはみんなにいじめられてるの」
「わかった。教えよう」
「よかった。ジョークの教祖がいい人で」
「誰にでも世界一のジョークを教えているわけじゃない。エミリアだから教えるのだ。なぜだと思う?」
「わかりません。わたしは教祖じゃないもの」
「自分が勝つためにジョークを使うこともできるのに、エミリアは自分のことより、友だちを勝たせてあげたいと言った」
「シモはわたしよりも助けがいっぱい必要なの」
「耳をかしなさい」

ジョークの教祖は世界一おもしろいジョークをこっそり教えてくれた。ものすごくおかしくて、おなかが痛くなった。並んでいる旅行者のひとりがもうすこしで救急車を呼びそうになった。きっと、盲腸になったとかんちがいしたんだと思う。そろそろ帰ろうと思って、飛ぶ薬を二粒ごくんと飲んで、スーパーモルモットに変身して空に飛びたった。飛んでいるあいだも、笑いがとまらなかった。それくらい、おかしかった。

家に帰ってきた。あとは、シモに話すだけ。とっても楽しみ。思い出すと、また笑いがでた。

文/訳 末延弘子 パウラ・ノロネン著『スーパーモルモット、インドへ飛ぶ』(2008)より


おすすめ作品の目次へ ▲このページのトップへもどる