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Ketunpoika ja suuri varjo    原書名:  Ketunpoika ja suuri varjo
 (こぎつねと大きな影)
 作者名:  Katariina Lempinen
 カタリーナ・レンピネン
 出版社 / 年:  WSOY / 2002
 ページ数:  24
 ISBN:  9510266361
 分類:  絵本
 備考:  

【要約】

沢の上流に松の木があります。その根もとにきつねの家族の巣穴がありました。母ぎつねと三匹のこぎつねが仲よく寄り添って眠っていたある晩、一匹のこぎつねが目を覚まし、巣穴から昇るお月さまにそわそわして、出かけたくなりました。

穴から外へ踏みだすと、雨に濡れた地面に足をすくわれて川に転げ落ちてしまいます。運よく、流木につかまったこぎつねは、流されるままに下流へ運ばれました。夜が白みはじめた頃、流木が葦に引っかかり、こぎつねは川辺の住人のカワウソの子どもに出会います。

「ぼく、まいごになって、家がわからなくなっちゃった。巣穴のある川の上流まで、連れていってくれませんか?」と、こぎつねはお願いしますが、そこには「大きな影」が住んでいるので、カワウソの子どもは教えてくれません。こぎつねは、しかたなく思って、「一人で行くしかないや」と旅を続けます。旅の途中で出会った、二匹のリスも、樫の木の枝にとまっていたカケスも、鄙びた柵越しのハリネズミの家族も、小径に横たわっていたアナグマも、小川の水面に映る自分の姿に見とれていたカササギも、みんな「大きな影」に怯えてこぎつねを案内してくれません。

とぼとぼ歩くこぎつねに声をかけたのは、フクロウでした。「大きな影」はちっとも怖くないと言って、こぎつねを案内してくれました。上流にたどり着くと、もう日は落ちかかっていました。夕日をうけて落ちた自分の影こそが、「大きな影」だったのだと知るこぎつね。自分を捜しに来てくれた母ぎつねと再会し、安心して眠りました。

日本で水彩画を、イギリスで版画を学び、ロンドンに在住するフィンランド人絵本作家の処女創作絵本。

【抜粋訳】

こぎつねは、すこしびくびくしながら、うつむいて歩きつづけました。いきなり、ふわふわの羽毛に頭をなでられました。
 見あげると、木の枝にフクロウがとまっていました。
「とぼとぼ歩いて、どちらまで?」
「大きな森にある家まで。でも、だれも教えてくれないんだ。そこには大きな影が住んでいて、こわいところなんだって」
「まわりの言うことなんて気にしないこと。みんなは、知らないものをこわがっているだけなんだから。わたしが大きな森まで、いっしょに行こう。そこは、小さな森や谷や葦とおなじくらい安全なところだよ」
「でも、大きな影のことは?」
「大きな影は、思っているほど大きくもないしこわくもないよ」

文/訳 末延弘子 カタリーナ・レンピネン著『こぎつねと大きな影』より


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