【要約】
沢の上流に松の木があります。その根もとにきつねの家族の巣穴がありました。母ぎつねと三匹のこぎつねが仲よく寄り添って眠っていたある晩、一匹のこぎつねが目を覚まし、巣穴から昇るお月さまにそわそわして、出かけたくなりました。
穴から外へ踏みだすと、雨に濡れた地面に足をすくわれて川に転げ落ちてしまいます。運よく、流木につかまったこぎつねは、流されるままに下流へ運ばれました。夜が白みはじめた頃、流木が葦に引っかかり、こぎつねは川辺の住人のカワウソの子どもに出会います。
「ぼく、まいごになって、家がわからなくなっちゃった。巣穴のある川の上流まで、連れていってくれませんか?」と、こぎつねはお願いしますが、そこには「大きな影」が住んでいるので、カワウソの子どもは教えてくれません。こぎつねは、しかたなく思って、「一人で行くしかないや」と旅を続けます。旅の途中で出会った、二匹のリスも、樫の木の枝にとまっていたカケスも、鄙びた柵越しのハリネズミの家族も、小径に横たわっていたアナグマも、小川の水面に映る自分の姿に見とれていたカササギも、みんな「大きな影」に怯えてこぎつねを案内してくれません。
とぼとぼ歩くこぎつねに声をかけたのは、フクロウでした。「大きな影」はちっとも怖くないと言って、こぎつねを案内してくれました。上流にたどり着くと、もう日は落ちかかっていました。夕日をうけて落ちた自分の影こそが、「大きな影」だったのだと知るこぎつね。自分を捜しに来てくれた母ぎつねと再会し、安心して眠りました。
日本で水彩画を、イギリスで版画を学び、ロンドンに在住するフィンランド人絵本作家の処女創作絵本。
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