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satu joka oli totta    原書名:  Satu joka oli totta
 (マントをはおって見る夢)
 作者名:  Katri Tapola,1961~
 カトリ・タポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2004
 ページ数:  37
 ISBN:  9513130843
 分類:  絵本
 備考:

【要約】

目を瞑って見る夢が冒険にみちたおとぎ話だったら、あなたはどうしますか? 冒険者のマントをはおった少年は、おとぎの世界をさまようことになります。そこで出会う動物たちとの触れあいは、少年の心に感情の波を呼びおこします。

オオカミのように堂々と胸をはって。
キツネに負けずに目を据えて。
ハリネズミのようにぽろぽろ泣いて。
だいすきなウサギを想って大空を仰いで。
アザラシのように安らぎを感じて。

子どもの心に芽生えた、怒り、悲しみ、恐れ、愛しさという情感が、おとぎ話のように巧みに語られ、その起伏をヴィルピ・タルヴィティエ(Virpi Talvitie)の光彩あふれるイラストが鮮やかに描き出しています。

【抜粋訳: pp.20-21】

いままでにキツネをみたことがありませんでした。少年はぶるるっと身ぶるいしました。北の大地は身にしみます。冬将軍は大声をあげ、夜は厚手の黒いコートのようにゆらゆらとゆれるからです。見あげるような松林と強大な冬将軍と夜にはさまれて、少年の心の奥底が寒さできゅっとよじれました。

オーロラが天空をゆらめいています。キツネの瞳は冬夜の燃えさしのようにするどくパチパチ燃えています。キツネが太古の松からちらりと姿をあらわして、小道へ一歩踏み出しました。

「キツネくん、ぼくこわいんだ」

キツネはとんがった鼻をますますとんがらせて、いじわるく答えました。

「それじゃ、こわがれば」

文/訳 末延弘子 カトリ・タポラ著『マントをはおって見る夢は』(2004)より


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