KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

邦訳本の案内

   

 tunnus ペレート・ムンドゥス ― ある物語 / Pereat mundus (新評論より 2005/9月刊行)

   
   

Pereat mundus

Pereat mundus

Hiroko Suenobu & Leena Krohn

「地球は生きています。そのことをわたしたちは忘れがちです。地殻がわずかに隙間をあけて一息つくだけで、大きな波は寄せては返し寄せては返します。そんな自然の前にあって人間は脆くも弱く、計り知れない苦しみを味わいます」

そう語るフィンランドの現代作家レーナ・クルーンは、眼前に迫る不安と未来への可能性を、邦訳四作目となる本書『ペレート・ムンドゥス』に結集させた。

世界の終末を危惧しかねない不安要素は、はたしていくつあるのだろう?そして、その不安はいくつまで増え続けるのだろう?破滅する世界にひそむ憂うべき不安が三六章にわたって書きつづられる。

テロの危険性、人間を追い越しかねない超人的知能AIの目覚しい発達、崩壊するモラル、シンギュラリティーへの不安、多種をかけあわせた混合種キメラを実験台にする人間、絶滅危機にある森のカエル、幻覚作用をもつヒヨスの栽培をする市民、低温保存で人体を凍結・保管する団体の存在、襲ってくる津波。あげればきりがない不安要素を、ホーカンという同名の主人公たちが淡々と体験してゆく。

そして、そんな不安や恐怖を抱えた患者たちを診るフェイクラブ博士も、もう一人の主人公だ。診療所の経営にくわえて、口臭や口の渇きを和らげるフェイクドロップという名のうがい薬を売っていることからフェイクラブ博士と呼ばれるようになったが、インターネットで診療を済ませることも名前の一因だ。患者層は幅広く、あらゆる恐怖症から過食・拒食症、そして妄想癖やニコチン中毒者まで博士にアドバイスを求めにメールを送ってくる。その相談者の一人が世界の終末論を説くホーカンだった。

『ペレート・ムンドゥス』は、地球の未来予想図となりうる数多くの選択肢を含んだ社会風刺であり非理想郷である。それと同時に、現代に警鐘を鳴らしながら未来の可能性を訴える作品です。

【邦訳情報】

作者名:レーナ・クルーン
邦訳名:ペレート・ムンドゥス ― ある物語
翻訳者:末延弘子
出版社:新評論
ISBN :4-7948-0672-8
刊行日:2005/9月刊行

表紙カバーは、前3作品(『ウンブラ/タイナロン』, 『木々は八月に何をするのか』)同様、レーナ・クルーン自身によるイラストです。

【原書情報】

作者名:Leena Krohn
作品名:Pereat mundus. romaani, eräänlainen.
出版社:WSOY
初版年:1998年
ISBN :951-0-23005-7

この作品については、 『おすすめ作品4』で紹介しています。
こちらもご観覧ください。


▲ 邦訳作品の目次へ