母親に必死で説明するKullervoですが、悲しみ、そして苦しみが込み上げてきます。いっそ生後まもなく殺してくれればよかったのにと母親に胸の内を吐露します。母親は人としての道徳観をKullervoに語ります。世界があり続ける限り犯してはいけないことがあるのだと。
ここで、少し目を背けたくなる展開が訪れます、少女＝妹がKullervoを誘惑します。Kullervoはもちろん耳を疑います。しかし、誘惑に屈服してしまいます。母親は当然のこととしてKullervoに道徳観を再び語ります。
Kullervoは、これまでの経験から、この世の掟を全否定します。自分には自分なりの掟があるのだと叫びます。結果的に少女＝妹はこの家に悪疫をもたらしました。秩序を乱したのです。母親は、娘に毒を与えます。
Kullervoはここで人生最大の悲しみを味わいます。唯一の女性であり、同時に妹を失ったのです。再び｢憎悪の炎｣が彼を包み込ます。憎き者の寿命を待たず、自らが寿命を与えるために、Kullervoは殺戮の旅へと赴きます。
ただ、ここでもHaavikkoはKullervoに善の魂を残しています。虐げられた犬です。Kullervoは、まるで自分に言い聞かせるかのように犬に語りかけます。
｢Sait olla, elää koirana elämääsi ｣
｢You were left alone, to live your life as a dog｣
殺戮の旅から家に帰宅したKullervoを待ちわびるものは誰もいません。家族は息絶えていました。同時にKullervoを埋葬してくれる人もいません。彼は生まれて死ぬまで孤独です。ここで自殺を決断します。そのときの彼の言葉は、悲劇そのものです。
｢Tämä on minulle niin hyvä ja rakas maailma että minä tapan itseni ｣
｢This world is so good and dear to me that I'll kill myself｣
文字通り全ては終りを迎えました。今回の曲"Empty Opening"は全てが終わった、まさにその瞬間をとらえています。最後までKullervoは、自分の掟に従いました。そして何にも満たされることなく彼の心は｢空虚｣のまま終わりを遂げのです。ここで、『Kullervon tarina』は完結します。
この曲は、物悲しい雰囲気ではじまります。そして、ギターとドラムがその重い空気を解き放ちます。全ては終わっのです。｢Clouds high up in the sky｣とあるのようにKullervoは、まさに雲となって空高く舞い上がったのです。しかし、｢Nobody will bury me｣というように誰も彼を見届けてくれる人はいません。Joutsenが感情を込めてKullervoの声を代弁してくれます。とても感動的な歌声です。
どうしてこの辛い世界に生まれてきたのかを知ることもなく、Kullervoは旅立ちます。彼の気持ちはまさに｢How did I get here｣です。何も満たされることなく、この｢悪の世界｣へ迷い込み、悲劇的にその世界を愛するようになってしまいます。この部分は少し強めにJoutsenが熱唱してくれます。そしてギターは、よくここまで楽器で表現できたものだと驚かされる出来です。
｢Siellä on taivas, tyhjä aukko｣
｢There it is, an empty opening｣
｢tyhjä aukko / empty opening｣が余りにも印象的です。Haavikkoはすごい言葉をKullervoに与えました。そしてこのメロディーには、感動せずにはいれません。本来Amorphisはこの手の曲にはピアノを配置します。しかし、今回はそれはありません。しかし、完全にmelodic metalとして成立していいます。Kullervoの人生最後の日を表現した、そして彼を苦悩から解放したすばらしい曲です。
