KIRJOJEN PUUTARHA
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 Paavo Haavikko - Kullervon tarina - Amorphis - eclipse

 

フィンランドを代表するMelodic death metalバンドAmorphisがアルバム「eclipse」(2006)をリリースしました。このアルバムの歌詞は、Paavo Haavikkoの劇作『Kullervon tarina』(クッレルヴォの物語, 1982,1989)に基づいています。

アルバムのリリースが今年のはじめでしたので時期的に遅れてしまいましたが、『Kullervon tarina』のあらすじを辿りながら、各曲の背景について大まかに綴ってみます。日本にもたくさんAmorphisのファンがおられると思います。多少なりともご参考になれば幸いです。

 
 
「eclipse」の1曲目は本来"Two Moons"ですが、物語の展開上"Born From Fire"が先に来ます。 "Born From Fire"のストーリーは、まだKullervoがUntamoの家にいるときの話です。

Untamoの妻は、Kullervoが将来必ずUntamo一族に復讐すると思い込んでいます。Kullervoの存在が気になって仕方がありません。そこで、しつこいぐらいUntamoにKullervoを処分するように説きます。

Haavikkoの世界でUntamoは「優しい存在」で描かれています。野蛮な部分だけではなく、人間性を描くことによって登場人物が、そして古代の話が身近に感じられます。それゆえ、Kullervoにたいして寛容な態度を最初はとります。

一方Kullervoは、Untamoの女主人が危惧するように、産みの両親に何が起こり、自分が「炎」に包まれた家からUntamoに連れ去られ、そして育てられたことを覚えています。そのことを視覚的にとらえ、Kullervoは、自分が「炎」の中から産まれたと語っている場面が"Born From Fire"です。もちろん「炎」は「復讐」を暗示してます。

軽快なギターが、この歌詞を引っ張ります。Amorphisの音楽の全般的な特徴として私が受けた印象では、前奏が長いことです。ただ、この曲に関してはすばやくヴォーカルにバトンが渡されます。ギターソロは、「炎」が「ヴォーカル」を包み込むように揺らめく印象を受けます。

ちなみに「The axe does all that work」の「axe」は、ストーリー上「斧」のことですが、「axe」には俗語で「ギター」の意味もあります。別な意味でこの曲の「axe」は「work」しています。おそらく、ギターだけでもこの曲は十分堪能できます。

その他に、ピアノがmelodicな印象を与えます。ストーリーに漂う攻撃性と対比として、悲しい部分がピアノで表現されています。Kullervoが、ふと我に返り現実を受け止める瞬間がそこに感じられます。

ヴォーカルに関しては、Joutsenがデスヴォイスまでは行かないまでも、炎の中でもがき苦しむ、いや、自分の出生を嘆くKullervoの胸の内を、持ち前の音域を生かして見事に表現しています。とりわけ、最後の「to die~♪」は感動すら覚えます。

なお、同様な印象を受けた曲に「elegy」(1996)に収められた"Better Unborn"があります。これもKullervoをその題材にしています。