KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

ニュース

もう一人のフィンランド文化収集家-サムリ・パウラハルユ / Samuli Paulaharju-

Samuli Paulaharju

Samuli Paulaharju

Samuli Paulaharju

Samuli Paulaharju

2005年の春にヘルシンキにあるフィンランド文学協会(SKS)を訪れました。既に何度か訪れていた場所でしたが、今回フィンランド文学協会の広報を勤めるシルッカ=リーサ・メットマキさん(上段・写真右側)のはからいで、はじめて「聖なる部屋」(Pyhä huone)に入室することができました。

この部屋には、フィンランドの国民叙事詩『カレヴァラ』(Kalevala,1835)の編者エリアス・レンロートがフィンランドの口承詩を収集した直筆のノートをはじめ、フィンランドの文化にとって貴重な古い文献がたくさん保管されていいます。エリアス・レンロートに関しては、『カレヴァラ』を紹介した書物に記載があるのでここでは取り扱いませんが、この部屋の片隅に設けられている「サムリ・パウラハルユ」の資料棚について簡単に今回のニュース&特集記事でご紹介したいと思います。

サムリ・パウラハルユ(Samuli Paulaharju,1875-1944)は、民俗文化の研究家 カールレ・クルーン(Kaarle Krohn,1863-1933)の民俗詩収集に関する書物を子供の頃に読んことがきっかけで、自国の文化にとても関心を抱くようになりました。そして、学生時代にユヴァスキュラ大学のセミナーで講師を務めていた建築家ウルヨ・ブロムステッド(Yrjö Blomstedt, 1871-1912)の民俗文化収集の業績にとても感動し、彼に師事しました。ブロムステッドの援助のおかげで、パウラハルユは念願の民俗文化の調査の旅を学生時代に経験することとなります。

大学を卒業後、パウラハルユはフィンランド北部のオウル(Oulu)という町で教師をしながら、自らもフィンランドの民俗詩、民俗歌謡、民俗童話などを収集するために幾度もフィンランド国内を旅しました。その収集は、民俗詩、民俗歌謡、民俗童話などにとどまらず、フィンランドの古い建築物、生活家具、生活用品などを克明にスケッチして資料として収集しました。

パウラハルユが生涯で収集した資料は、記録ノート6万5千冊、4千ページを超える民俗学的な資料、そして当時を知ることのできるスケッチが数千点にも及びます。彼の業績は、フィンランドの文化に関わる(文学、民俗学、建築学その他)多くの研究者の欠かすことのできない資料として、現在も重宝されています。

パウラハルユの書籍はいくつかありますが、ここでは2003年にフィンランド文学協会が彼の資料をもとに編纂した『Karjalaista rakennustaitoa. Kuvaus Pohjois- ja Itä-Karjalan rakennuksista』(カレリア地方の建築技術。北カレリア地方と東カレリア地方の建築物についての描写)をご紹介します。

この書籍(下段の画像)は、カレリア地方の古い建築物がパウラハルユのスケッチとともに紹介されています。一見、文学とはかけ離れている気がしますが、古い文学作品などを読んでいると意外と理解できない、あるいは想像できないのが、古い建物の描写です。たとえば、パウラハルユのスケッチは鍵の形状一つとっても詳細に描かれており、当時の建物の様子を知るうえで、とても参考になる資料です。文学に関わらず、フィンランドの文化について興味のある方々は、是非とも目を通していただきたい一冊です。

【書籍情報】

原書名

Paulaharju, Samuli: Karjalaista rakennustaitoa. Kuvaus Pohjois- ja Ita-Karjalan rakennuksista

出版社

SKS (Suomalaisen kirjallisuuden seura)

出版年

2003

ISBN

951-746-525-4

【関連サイト情報】

サムリ・パウラハルユに関しては、オウル市立図書館(Oulun kaupungin kirjasto)が作成したとても詳細なサイトがあります。フィンランド語のみのサイトですが、興味のある方はのぞいて見てください!(リンク⇒こちら


ニュース&特集記事の目次へ   ▲このページのトップへもどる