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画家ハンヌ・ヴァイサネンの処女小説、2005年度の感謝本勲章を受賞

Vanikan palat 2005年度の感謝本勲章(Kiitos kirjasta -mitali)は、画家であり作家でもあるハンヌ・ヴァイサネン(Hannu Väisänen, 1951~)の処女小説『少年時代(Vanikan palat)』(Otava, 2004)に贈られました。ヴァイサネンは、1999年の『カレヴァラ(Kalevala)』(Otava, 1999)改訂版にイラストを施して一新したことでも有名です。『少年時代』は、ヴァイサネンの過ごした1950年代の故郷オウルを舞台に語られた自伝的な小説です。兵舎のある環境で過ごした子ども時代が、感傷的にならずに淡々と綴られ、「流れるような文体とともに、子どもの視点から捉えられた視覚世界や経験や感情が読者の共感を呼び起こします(選考委員会評)」。

感謝本勲章は、ヘルシンキのエスプラナディ公園で催される「本と薔薇の日」に贈呈されます。そもそも「本と薔薇の日」は、スペインのカタルーニャ地方のサン・ジョルディ伝説に由来しています。騎士サン・ジョルディがドラゴンの生贄となった王女を果敢に救い出したところ、ドラゴンの流した血から真紅の薔薇が咲き誇り、いちばん美しい薔薇が王女に捧げられました。サン・ジョルディは守護聖人として称えられ、殉教した4月23日には大切な人に薔薇と本が贈られるようになりました。またその勇姿は、カタルーニャの自治や言語を禁止した独裁政治と闘う精神として崇められています。

「本と薔薇の日」には、男性は女性に真紅の薔薇を、女性は男性に本を贈るのが一般的です。1995年にパリで開催されたユネスコ総会で4月23日を「世界本の日」とする宣言が採択されたことや、この日が文豪シェークスピアとセルバンテスの命日であることからも、カタルーニャ地方だけではなくヨーロッパ諸国でも本をとおして愛と知性を育む日として親しまれています。フィンランドを含め、イギリスやアイルランドのように「本と薔薇の日」を別の日に祝う国もあります。フィンランドでは、出版社、書籍販売店、図書館などが、書籍にまつわるイベントや現象を挙げながら本や読書を広める目的で「本と薔薇の日」を催すようになりました。

link1 感謝本勲章(Kiitos kirjasta -mitali)の過去の受賞者については、こちらをご覧下さい。


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