KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

ニュース

Kristiina Louhi 2004年度フィンランディア・ジュニア賞リーッタ・ヤロネンとクリスティーナ・ロウヒへ

2004年度のフィンランディア・ジュニア賞は、リーッタ・ヤロネン(Riitta Jalonen, 1954~)作、クリスティーナ・ロウヒ(Kristiina Louhi, 1950~)絵『とまり木と少女(Tyttö ja naakkapuu)』(2004)が受賞しました。

選考委員会長の批評家ユッカ・カヤヴァによると、今年度の候補作品は、いずれの6作品とも独創性と個性に溢れ、子どもたちの共感や関心を捉えるものでした。そのなかでも、群を抜いて「胸を突き、広い読者層に訴えるものと信じた」作品がヤロネンとロウヒの『とまり木と少女』でした。

同作品は、父親の死に対する幼い少女の悲しみと、その悲しみを受け入れて成長してゆく少女の姿を描いたものです。母親と一緒に新境地へ向かう少女は、鉄道駅で大きな木にコクマルガラスが止まっているのを目にします。そして、前触れもなくすいっとコクマルガラスが飛び去ってゆく姿に、父親との思い出が映像となって蘇ってきます。

喪失や孤独を感じながら、いかに少女は事実を受け止めて成長してゆくのでしょうか。テーマは極めて重たくありながらも、文章には希望に満ちた透明感が感じられます。また、ロウヒの柔らかくてピュアなイラストが、ヤロネンのきめ細やかな文章と分かつことなく互恵しあって物語を作り上げています。

この作品は、父親が亡くなったことで幼い少女が自分の気持ちを整理しようとするセラピー作品というよりも、むしろ「想像性を掻きたてるような、子どもの視点から見た物事や現象への自由な解釈を促すような童話」です。そして、大人と一緒に読めて、一緒に考えることができる児童書であるという点も、受賞理由のひとつとして挙げられています。


ニュース&特集記事の目次へ   ▲このページのトップへもどる